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スプーン1本で優しくつくるオリーブオイルマヨネーズ

by YUCCI

オリーブオイルプランナー 乳井ゆうかの自由発想レシピ 

 

どんぐりを持ったリス

 

紀尾井町にある麹町さくら塾で開催されたオリーブオイルの会。最後の歓談タイムとなった時、講師を務めた僕の目の前に、ドングリの実を握ったリスのような眼をした小柄な女性がフンワリと現れた。

 

「オリーブオイルがとにかく大好きです。現地での収穫体験や、搾油所を見学するためイタリアでの短期滞在も経験しました」。

 

そう、一枚の名刺を差し出しながら話しかけてきたのが、yucciこと乳井ゆうかさんでした。

 

まさに、ドングリの実を求めて木にスルスルとよじ登っていくリスのような人。

 

そんな出会いをきっかけに、彼女がオリーブオイル修行でイタリアに滞在している現在、一緒にオリーブ栽培畑を見に出掛けては生産者の話を聞いたり、公称樹齢2000年で毎年元気に実をつける古木を訪ねてドライブするなど、今では、すっかりオリーブオイル仲間の一人となっています。

 

大学では心理学を専攻し、心理的メカニズムを学んだそうですが、卒業を控え進路を探るなか、一般企業への就職を目指す同級生とは違う道を選択。

それが、食の世界でした。「大学時代からはじめた料理で、自分の思いを自由に表現したい」。両親の影響で、添加物をあまり摂取しない食生活を送っていただけに、子どもの頃から味覚に対して人より敏感。自分の決断に何の迷いもなかったと言います。

 

東京のイタリアレストランでキッチンスタッフの仕事に就いたゆうかさん、最初に任されたのは前菜でした。

 

オーナーのイタリア人シェフ Ivo Virgilioが作る南イタリアの前菜は、シンプルだけど素材の味をしっかりと引き出した力強い料理で、これに欠かせないのがオリーブオイル。その心を伝授しながらAperitivoの一枚が彼女のお皿の表現に繋がり、YUCCIの料理のベースとなっていくのです。

原点を知る旅

 

そして、イタリア語を学びながらオリーブオイルの本場で知識を吸収しようとフィレンツェ行きを決意。

 

知る人ぞ知るオリーブオイルのポテンシャリティーと、その美味しさにゆうかさんが魅了されたのは、2015年のこと。生のイタリア食生活に触れたいと選んだホームステイの初日、食卓に現れたのは、なんとも魅力的な色をした無濾過のオリーブオイルでした。

 

「友人の農家が造った搾りたてよ。この時期しか食べられないからね」と、差し出すホームステイのお母さん。

 

焦る気持ちを抑え、こんがり焼けたトスカーナパンの表面にニンニクをこすりつけ、たっぷりかけた搾りたての美しいオリーブオイルにかぶりついたその瞬間、意識がどこかに吹っ飛んでしまった。

 

「あまりに衝撃的な本場のオリーブオイルとの出会いに、世界が変わりました。

 

一人でも多くの人にこの魅力を伝えることが私の使命だと、勝手に思い込んでしまって(笑)」。

 

そして、農場をまわりながら本物のオリーブオイルの良さを体験するのですが、イタリアへ渡ったのは人生の迷いも半分あったとか。

 

料理人の修行をすると、決まって「将来は、お店を出すんですね」と言われる。

 

自分は料理人を目指しているのではなく、空間も含めた「食の場」の演出がしたい。それをどうやって仕事につなげればいいのか・・・。

 

そんな迷いのなかで知った本物のオリーブオイル、霧が晴れるように先の道が見えた瞬間でした。

 

日本へ帰国したゆうかさんは、早速、イタリアのソムリエ協会、AISOにてオリーブオイルソムリエの資格を取得。

 

オリーブオイルと食材の組み合わせを独自に研究し、色、食感、香りを求めた結果、イタリアらしさ、日本らしさを融合した料理のスタイルができあがったのです。

食の世界観

 

この10年を振り返れば、食生活は様変わりし、オリーブオイルの世界も大きく変貌しました。健康に良いともてはやされ、調理用として着実に消費量が伸び、今やオリーブオイルは日本の食生活に自然に溶け込んでいる存在です。

 

その一方で、オリーブオイルが持つ多様な香りと味の魅力が浸透していないのも事実です。

 

彼女はイタリアでの経験が転機となり、オリーブオイルに真剣に向き合おうと専門知識を高め、厨房経験を生かし、今という時代の変化に左右されないオリーブオイルの魅力的な使い方を伝える活動を開始しています。

 

フィレンツェでの語学勉強を修了して、現在はトリノのミシュラン☆レストランで活動中。

 

日本の拠点は、世田谷区深沢の古民家をリノベーションしたStudio798。

母が経営する会社の仲間とともに個性的な「食の場」を提供しています。

例えば、テーブルの中央に3メートル近くある杉材の板を置き、鮮やかな色を掛け合わせた野菜を新鮮なオリーブオイルで贅沢に包みこむ。

まるで、テーブルの上にお花畑が出現したような演出。父親がデザインし手作りした木の箱や、和紙を素材にしたWASARAを使いオリジナリティあふれる「食の場」に辿り着いたのです。

多くのファンが常に進化している彼女のことを「オリーブオイル・ アーチスト」、「オリーブオイル・ソリスト」と呼び、作品を楽しみにしています。

心理学を学んだゆうかさんが作る食膳で彼女が使うオリーブオイルが喜んでいること、彼女が使う食材が喜んでいること、そして、それらを楽しんでいる人たちの驚きと笑顔の表情が浮かびます。

オリーブオイルの事なら何でも知りたいわ。

摘みたての実から葉っぱと小枝を取り除くのも​大切な仕事。

乳井ゆうかさんのプロフィール

AISO(イタリアオリーブオイルソムリエ協会)認定オリーブオイルソムリエ。

様々なシーンに合わせてお食事を楽しむ空間クチニーナユッチを主宰。イタリア料理をベースに、和の要素を掛け合わせたお料理がコンセプト。自身が選ぶフレッシュで本当に美味しいオリーブオイルを惜しみなく使い、季節の食材と、その年穫れたオリーブオイルの見事なabbinamento(アッビナメント)を創作するオリーブオイル・プランナー。

現在トリノのミシュラン☆レストランで活躍中。

YUCCIのインスタグラム https://www.instagram.com/y_u_c_c_i__/

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